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フイルムセンター、斉藤寅二郎(寅次郎)特集で「東京五人男」「大笑い江戸っ子祭」をみる。成瀬巳喜男のときみたいに、大大的な回顧上映が行なわれると思いきや、申し訳程度の十番組しかなく、代表作の「子宝騒動」さえも上映されないとはどういうことか。やはり喜劇にたいする認識は低いのか。それでも前記二作品はどっちもすごく面白く、寅二郎監督および日本のすぐれた喜劇人の才能をかいまみることができたのは嬉しいことだった。 さて、劇団ズーズーC毎週土日劇場全十話『嗚呼、トイレ殺人事件』の第一話「ああ、田中良男」をみる(於:秋葉原ズーズーC劇場)。 ズーズーCは俺のお気に入り劇団のひとつで、六年前からほぼ毎回みにいっている。失敗作もあるけれど、作・演出・主演にして主宰のオメオリケイジはまぎれもなく才能豊かな喜劇人といっていい。その世界は、小劇場とよぶよりか、大衆演劇や軽演劇に近く、それはやはり元元の主宰で日本の喜劇の研究家でもある、原健太郎の影響が大きいのではないかと思う。ところが三年ぐらいまえに、十ヶ月連続公演なんて無茶なことやって以後、やや勢いが衰えたようになってしまい、劇団員も減り、この一年は公演の案内もなく、いったいどうしてるんだろうと心配していたのだが、また無謀な試みを開始した。秋葉原に自前の常打ち小屋を作り、またまた十ヶ月、こんどは毎週土日曜に、月替りで連続物を上演してゆくというのだ。その記念すべき第一話の、柿落とし公演というわけだ。 内容は…… 実際に起きた殺人事件を劇化した、「検証 トイレ殺人事件」の開演一時間前、芝居に出演し、殺される登場人物の気持が理解できないまま殺される役者の役を演じる男は、どうしても自分が演じる、殺される登場人物の気持が理解できないまま殺される男の気持が理解できない(という、ややこしい設定なのです)。舞台には二つの個室便所が置かれ、扉は透かしになっていて、そこに別の男がはじめから洋式便器に腰掛け、外の様子を窺っている。役者も隣の個室に入り、便器に座り、一息つき、さてもうすこし練習しようと外に出かけた瞬間、隣にいた男に声をかけられる。 話を聞いていると、どうやら男は、別の場所にいる謎の人物から脅迫を受けていて、役者とともに、便所から一歩でも外へ出ると、殺されるかもしれないらしいのだ。脅迫者はどこからか彼らを見張っていて、男はそいつから携帯にかかってくる電話で指令を受け、隣にいる役者を監禁しておかなくてはならないのだという。 と、ここまでは近頃ありがちな恐怖映画の設定で、ふつうなら脅迫された二人が力をあわせてこの状況から脱出する物語になるはずだけれども、そこはそれ、そんなことではすまされない。男はなぜか役者の演技に異常にこだわり、脅迫者からの電話もそっちのけで、役者に稽古をつけはじめる。オメオリケイジ扮する男がわけのわからない屁理屈をこねながら、キッチン演ずる役者を翻弄するという、ズーズーCの観客にとっては見慣れた展開で、この屁理屈の展開の仕方が、おおよその笑わせどころといっていい。そして最後に、意外な結末が用意され、さらに次回、来月に続いていくわけだ。とりあえず物語が完結していないという不満は残るが、それでもひとつのシチエイションコメデイとして充分面白い。一時間二十分の二人芝居なのだが、一時間ほどに切り詰めたほうがすっきりしていたかもしれない。今回は特殊な設定だったこともあるけど、この劇団の芝居は、どうしても屁理屈の展開で成り立っているので、オメオリケイジの一人舞台になってしまいがちで、動きに乏しくなる。「大笑い江戸っ子祭」での有島一郎の足の使い方、エノケンと森川信の肩の揉みっこは素晴らしかった。ぜひともああした動きを学んでほしい。あとは以前いた、毒まんじゅうやギルみたいな、濃〜い男優を揃えること。 ともかく、今回見逃した人でも、次回は楽しめるように作ってあるそうだから、是非是非足を運んでほしい。こうした芝居の妙がわからないバカが多いとは、本当に困ったことなのだから。 |
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