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俺は80年代をつうじてビートたけしを尊敬崇拝していた。その反動で、以後のたけしが嫌いになってしまったのだ。もちろん北野武映画なぞすこしも面白いと思ったことはない。かつてたけしは、森田芳光の「家族ゲーム」を、左利きの映画と評していたが(正統派でないといった意味か?)、自分の映画だって左利きじゃないかと思う。クロマニヨンハスミや欧米人に褒められて悦に入ってる姿は醜いの一言に尽きる。 ダウンタウンの漫才は85年ぐらいから面白いとの噂が流れていて、最初に見たのはヤンキーネタ、これはあまり面白くなかったけれど、つぎに見た誘拐ネタで大爆笑し、さらに「さて、何でしょう?」でおなじみクイズネタもすばらしく、俺はしばらくテレビ蘭をながめてダウンタウンの漫才が放送されないか捜していたものだ。 松本はほどなく漫才をやめてコントをやりはじめる。しかしこれはあまり感心しなかった。やっぱり松本は言葉の感覚に秀でた男で、喋りの笑いのほうが合っていると思った。「寸止め海峡(仮題)」なる武道館だかでやった一万円ライブのビデオが話題になって、俺のまわりでも喜んでるヤツがいたのだが、見てみてちっとも笑えなかった。もっともこれは一番面白い場面が収録されていないらしいが、つぎにやった料金後払いライブはつまらないと一円しか払わない客が続出したと聞いた。『遺書』とかいう本をだしたあたりから異様に説教臭くなったし、ダウンタウンは茶の間に認知されたようだが、テレビをすっかり見なくなっていた俺は、かつてのたけし同様、松本が反動的に嫌いになりかかっていたのだ。桑田佳祐と長渕剛の抗争が勃発したとき、松本は天才は何をやっても許されるというぐあいに長渕を擁護したのにも違和感があった。天才を云云するなら、松本はむしろ桑田を支持すべきだったのではないか。結局松本は、成りあがり者の傲慢さに共鳴しただけでしかないのだ。宅八郎がSPA!で松本批判をやりはじめたことがあり、俺は宅がどんな論理を展開するのか楽しみにしてたのだが、一回きりでやめてしまい、連載自体も打ち切りになってしまった。だれか(ちゃんと笑いのわかる人)が松本の批判すべきところは徹底批判するべきだと思う。 その後松本は、「頭頭(とうず)」とか「ビジュアルバム」といった映像作品を発表し、俺はまた松本の才能に惹かれた。松本は舞台より映像表現に向いてるのではないかと思った。『日経エンタテインメント』での映画評「シネマ坊主」もなかなか的確で、ひそかに松本人志の映画進出を心待ちにしていたのだ。 そんなわけだから、「大日本人」はついにきた、といったかんじだ。別になんとか映画祭に出品する必要はなかったけれど。 最後の大日本人、大佐藤を取材した記録映画風の体裁になっている。インテリぶってるとかいう批判があったけども、これはなんでも映画にしてしまおうという昨今のドキュメンタリーばやりのウンコ性をおちょくったものだろう。しかしはじめのうちかなり退屈なのはたしかだ。画面はひたすら、うだつのあがらない風体の大佐藤の生活を追ってゆく。そこへ仕事が入り、やっと大日本人の秘密が明らかにされる。都会に獣が現われたのだ。建物を根こそぎ破壊する獣に、巨大化した大佐藤が立ち向かい、闘い、倒す。これが防衛庁から命じられた大日本人の任務なのだ。 このあとつぎつぎと登場する獣たちおよび大日本人の動きは、懐かしい人形アニメーションみたいで嬉しい。このように闘ってはいるものの、大日本人の人気はいまひとつ。テレビでも深夜にしか放送されず、視聴率は天気予報より低いという。 このように、異様な世界がありふれた日常に何事もないように包みこまれ、写実的に表現されるという、「頭頭」と同じ構成になっている。明石家さんまがむかしやっていた「心はロンリー気持は…」みたいに物語はまっとうながら背景に無関係にギャグが織り込まれるというのとも違う。無理に笑わそうとはしてないのだ。だからこの微妙な面白さは多くの人間には受け入れがたいものかもしれず、ここにこそ松本ならではの世界が表現されている。つまり大傑作なので、文化に乏しいフランス人ごときに理解されるはずもない。映画人としての松本人志は充分に実力を発揮したといってよく、次回作も期待できる。為替直美なんてどうでもいい。 とはいえ、最後のオチは、シュールな小劇場を見慣れた目からするとありきたりで、かといってテレビの笑いしか知らない人には理解しづらく、もうすこしアッといわせるものにしてほしかった。 |
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プロポーズ大作戦
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プロポーズ大作戦 2007/06/10 17:05 |
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