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zoom RSS 劇評14 ズーズーC

<<   作成日時 : 2012/05/29 20:56   >>

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これもHPに載せたもの

  喜劇する力
 はじめて劇団ズーズーCの公演をみたのは二年前、土佐の牢屋に閉じ込められたヤクザ一家のおはなしで、三十分ぐらいの劇だった。それがすごくおもしろく、まったくサマカトの遠野なんかメじゃないよ、とサマカトでご招待されたのも忘れて感動してしまった。そのつぎの「喜劇 明治八年苗字必称令」もすばらしい作品だった。この劇団の特徴は、とにかく濃い。野郎四人に女一人、さいしょっからいきなり喉の奥からしぼりだされたようなすさまじい発声で、みてるこっちの喉まで熱くなってくる。複雑に絡みあった関係がどんどんめちゃめちゃに壊れていき、だいたいいつも男たちがフンドシ一丁になる最後はまさに爆笑物で、俺は笑いすぎてサ○ワタリになってしまったほどだ。以後、毎公演をみている、現在最もお気に入りの劇団といっていい。彼等の劇の題名にかならずつけられる「喜劇」という語は、シュールやナンセンスといったはやりでちょっとおしゃれな雰囲気の笑い(Dr.エクアドルのいうJ演劇)とは無縁の泥臭い笑いを演りつづけるという意志のあらわれのようにみえる。それはけっして洗練されたコメディーではない。あくまで泥臭い「喜劇」なのだ。いまどき前売り千円なんて入場料も、ノルマなし、劇団員の友達は呼ばないという姿勢も『演劇ぶっく』的連帯をみせるちまたの小劇団とは一線を劃している。そんなズーズーCも、前作「喜劇 魔女裁判」はいまひとつ物足りなかった。はじめに感じた「濃さ」が、薄れてしまったようなのだ。彼等に洋物は似合わないのか(名作の誉れ高い「ギロチン」はみていないので、再演をお願いします)。それとももう作者オメオリケイジは限界に達してしまったのか。
 今回の「喜劇 姥捨山笑」(六月二十四日 ミニホール新宿Fu)という題名には、喜劇のあとさらに笑という字までついている。これは彼等にとって笑いにたいするあくなき追求の意志なのか。みるまでの俺の不安はもうひとつ、女性役者がいっきに四人もふえてしまったということだ。それはこの劇団の濃さと泥臭さを、さらに薄めてしまいはせぬか。屋上屋を架したような「笑」は、はたして吉とでるか凶とでるか。
 けっかは、中吉ぐらい、かな。「苗字必称令」のおもしろさにはおよばないのだが、それでも十分な満足感を得ることができた。
 舞台は、昔の田舎(それぐらい漠然としている)。七十歳になった老人は山に棄てられるのが村の決まりだ。主人公は今年七十の与作。年寄が山に棄てられる風習自体は、彼にとっては面白い。おそらく与作自身、棄てられる老人を笑ってきたのだろう。だけども与作は自分が笑われるのはやなのだ。どうせなら事態をもっと面白くしてしまいたい、これが与作の起こす奇妙な行動の動機だ。棄てられる老人は家族と一日に一人ずつ盃をかわすのが決まり(ここの場面、「ようござんすかぁ」「ようござんす」と、妙な身振りでやりとりをかわすところなど、なんか教育テレビでやってた「ふるさとの伝承」にでてきそうな所作事で楽しめる)。そこで与作は、家族の一人一人に不信と不和を吹きこみ、はたして棄てられるべきは誰なのか、と問い詰め、家族の絆をバラバラにしてしまう。隣家の親子も巻きこむふくざつで奇怪な屁理屈の展開は、オメオリ戯曲の真骨頂だ。けっきょく姥捨ての儀礼もしっちゃかめっちゃかで、与作はまんまと生き延びることに成功する。
 決して舞台を薄めまいとするかのごとくに表情を作った女優たち。声帯がつぶれるのではないかとおもうほどに押し殺した声を轟かせる男優たち。いかにもありそうな田舎の風習などなどが、舞台に濃厚で泥臭い喜劇の空間をつくりあげる。特筆すべきは、与作の戦略がけっして運命に立ち向かおうという、悲壮なものではないことだ。最後に家族一同は、この理不尽な姥捨ての制度を廃棄するため立ちあがろうと団結する。それすら与作は鼻で笑ってあきらめさせるのだ。もちろん与作は「楢山節考」のおりんみたいに運命や状況を甘んじて受け入れるわけでもない。他人のことなぞかまわず、とにかく生きる。運命に立ち向かうのがギリシャ悲劇以来の西洋演劇の精神だとすれば、自分が生き残るためにあらゆる手立てを尽くす与作の行動は、まさに喜劇する精神だ(ミーカーって生物学者がたしかそんな本を書いていた)。喜劇する力は、状況を乗り越えるのでなく、受け入れるのでもなく、すべてをただメチャクチャにブチ壊す。

 付記 ズーズーCも、何の気なしに観にいって感動し、その後見続けた。いまでも秋葉原の自前の劇場で頑張っていて、当ブログでも紹介している。「ギロチン」は再演を観たが、それほどのものではなかった。

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