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zoom RSS 芸術小説 超探偵・高橋節夫の事件簿3

<<   作成日時 : 2017/06/23 21:51   >>

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   3身体殺人事件――さようなら、高橋節夫

 私はこれから、私たちが遭遇した、世にも恐ろしい事件について語らなければならない。私は、この事件についてだけは、決して語ることはないと思っていた。だがついに、封印を解き、語るべきときがきたのだ。決して語るべきではないと思いながらも、その半面、心の奥底では、これを語り残したまま死ぬことはできないとさえ思っていた。それほど、これは恐ろしい出来事だったのだ。

 超探偵・高橋節夫が豚高闘竜殺人事件をみごと解決し、糞田呪限無を死刑台送りにしてから一月ばかり経ったある日、私はいつものように超探偵・高橋節夫と話し合っていた。
「のう高橋節夫、おぬしはつねづね、僕に解決できない事件はない、と豪語しておるが、はたしてこの事件は、どうかのう?」
と私は、今朝の山田新聞を開いた。そこには、「夢!感動!面箆直吉密室に死す」との見出しが躍っている。私は記事を読みあげた。
「神に仕える身ながら、権力者にひたすらおもねり、そのくせツメが甘いので出世できず、いうことがコロコロ変わり、一まわり以上歳の離れた女子大生に懸想し、貸した物は返さず、やたら調子だけはいいゲス人間の面箆直吉がポコチンを切り取られて殺害されたところで誰も悲しむ者などなかったが、犯行現場が完全なる密室だったことがマニアのあいだでひそかな話題をよんでいる。警察によると、面箆の家には、近所に住む変質者・河豚縞性交がたびたび泊りに来ており、なんらかのトラブルがあったとみて調べているが、密室の謎を解かないかぎり、河豚縞を逮捕できないとして、警察は頭を抱えている」
 私は高橋節夫の顔がみるみる悦びに満ちあふれてゆくのを感じとった。高橋節夫は晴れやかな表情で言った。「さっそく現場を見に行こう」
 私たちは現場へ急行した。そこには旧知の驚木警部が捜査を指揮していた。
「これはこれは高橋節夫ともう一人の人、ようこそいらっしゃいました。不来の相にして来り、不見の相にして見ゆ」
と出迎えた警部は謎めいた言葉を口にした。
 警部は事件を説明してくれた。面箆直吉が数日間表へ出てこないのを不審に思った管理人は、合鍵で部屋を開けようとしたが、扉にはドアチェーンがされていた。管理人は警察を呼び、警官が鎖を切断すると、そこにはポコチンを切り取られた面箆の死体が横たわっていたという。部屋には鍵が残されており、面箆のしなびたポコチンと並べて置かれていた。窓にもすべて錠がかかっていた。重要参考人の河豚縞性交は近くに自分の下宿があるにもかかわらず、面箆の家に四日も五日も泊り、面箆の家に歯ブラシを置こうとして諍いを起こし、あげくにオナニーしてるところを見られ追い出されたらしい。
「動機は充分だな」と私は言った。「しかし問題は密室だ」
 私は高橋節夫をみた。高橋節夫はじっと目を伏せ、脳内で受信した映像を吟味し、情報を分析しているようだった。やがて高橋節夫は晴れやかな顔で頭をあげた。
「どこかに隠し扉があるはずだ。河豚縞はそれを使って脱出したのだろう」
 そこでわれわれは部屋中を隈なく探した。すると、壁にポコチン一本分がやっと入るだけの穴が穿たれているのが発見された。穴の奥を覗き込むと、ボタンのようなものがみえる。驚木警部は言った。
「これだな、ここにポコチンを挿入すると、ボタンが押され、隠し扉が開くって寸法だ」
 そして警部は、なるべくポコチンの大きそうな警官をさがし、彼をよんだ。「早死田君、ちょっと全裸になって、こっちへ来たまえ」
 警官はいわれたとおり全裸になると、ポコチンを勃起させ、穴に挿入した。カチリとボタンが押されると、壁が動き、外の光と空気が流れ込んできた。扉は数秒後に自動的に閉まった。皆は一様に晴れやかな表情になった。そこへカールを食べながらゆらりと現われたのは、河豚縞性交だった。知人の死を聞き、なおカールを食べる男。私は慄然とした。この男はきっと不条理がわかるに違いない。そのうえ、「時が降る 時が降る 冷たい俺の上にも」と不気味な自作の詩を口ずさんでいた。
 河豚縞は色が黒く、髭が濃く、眼鏡の奥の眼はどんよりと魚が死んだような眼をしている。しかしその身体には、絶倫ともいうべき強烈な身体性がそなわっていた。
「神妙にしろ。観念するんだな」という驚木警部の言葉を聞いても、彼はほくそ笑んでいた。私にはその笑みが気になった。どうあがいても、密室の謎が解けたいま、河豚縞の罪は免れるはずがない。それなのに、この余裕の表情はなにを物語るのだろうか? そのうえ、この男は「ぶっつぶせ ぶっつぶせ 砂漠だ 砂漠だ」と不気味な自作の詩を口ずさんでいた。
 取調べのあいだ、私は高橋節夫と別室で歓談していた。そこへ、薄い笑みを浮かべながらカールを食べている河豚縞性交を連れた驚木警部が泣きながらやってきた。
「どうも困ったことになりましたよ、高橋節夫ともう一人の人。河豚縞のポコチンは、最大限に勃起した状態で18センチなのですが、穴の深さは21センチなのです。これではボタンを押すことができず、扉を開くことはできません」
 河豚縞性交の笑いの意味はこれだったのか、と私は頭を鈍器で殴られたような思いだった。たとえ隠し扉が発見されても、それを開ける手段をもたなければ、密室の謎は解明されたとはいえない。面箆直吉のポコチンはすでに萎んだ状態で切り取られている。となれば面箆のポコチンを使って扉を開けることもまた不可能。あの笑いは、貴様らに密室の謎が解けてたまるか、といっているようだった。つまりは河豚縞が犯人であることは間違いない。だが、密室の謎を解かないかぎり、彼を逮捕することはできないのだ。なんという恐ろしい男!
 私は高橋節夫の顔をみつめた。高橋節夫は河豚縞よりもいっそうの笑顔を浮かべ、言った。
「事件は解決したよ」

  読者への挑戦状
 私はここで、読者に挑戦する。
 はたして犯人は誰か? いかなる目的で、またどのような方法で、密室を形成したのか?
 いまや、すべての手がかりは、提出された!


 解決篇

 高橋節夫はゆっくりとわれわれを見まわし、重重しく言った。
「ピンと張った強さのようなものだよ」
「ピンと張った、強さのようなもの?」
「そう、あの、河豚縞性交の絶倫ともいうべき強烈な身体性を見たろう。ピンと張った強さのようなものに裏打ちされた、即物的リアリズム。それが事件を解く鍵だ。君は知らないだろうか? たとえ最大限に勃起した状態で18センチのポコチンでも、ウッと力を入れれば、そこにピンと張った強い身体性が漲り、その瞬間だけ、21センチになることを。やい河豚縞性交、君はピンと張った身体を利用して、ウッと力を入れることでポコチンを18センチから一瞬21センチに膨張させ、隠し扉に通ずるボタンを押し、屋外に脱出し、密室を形成したのだ」
 河豚縞性交の魚が死んだような目は、まるで魚が死んだように白く濁りはじめた。やがて河豚縞はがっくりとうなだれ、くずおれた。ひとつの生命が、そこで終わった。

 身体殺人事件が無事解決し、私と高橋節夫はちかくの酒場で祝杯をあげていた。私は芳醇な酒に酔い、上機嫌で高橋節夫に話しかけた。
「のう高橋節夫、まことおぬしのいうとおり、おぬしに解決できぬ事件はない。まさにわしらの向うところ、敵なしじゃのう」
 私の言葉を聞いても、高橋節夫は返事をせず、高橋節夫はピクリとも動かなかった。私は奇妙に思い、もう一度、高橋節夫によびかけた。
「高橋節夫?」
 高橋節夫は目を伏せたまま答えない。私はみたび高橋節夫によびかけた。
「高橋節夫…」
 私は高橋節夫の顔が血の気を失っているのに気づいた。高橋節夫の唇の色は紫色に変色し、高橋節夫はもう息もしていない。
「高橋節夫!」
 私は叫び、あわてて卓の下に頭を突っ込み、高橋節夫の股間を覗き込み、そして叫んだ。
「チョッチョリーナー!」
 高橋節夫のポコチンはすでに切り取られ、その、高橋節夫の切り取られたポコチンの切り口からは、高橋節夫の体内に残された高橋節夫の血液の最後の一雫が滴り落ち、たったいま、高橋節夫の体を離れたばかりだった。
 こうして、高橋節夫殺人事件は、迷宮入りになったのです。(了)

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