ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展

 ラフォーレミュージアムで「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展」をみる。

 ヤンシュワンクマイエルの映画は学生時代に観た。とうじは前衛芸術やカルト芸術にいれあげ、オフシアターとよばれる場所に通いつめていて、イメージフォーラムの上映案内で、男の顔面が裂け、蛇口が飛び出している写真を見、なんじゃこりゃとおもってさっそく駆けつけたのだが、期待以上、想像を絶する面白さで、その後発売されたビデオもすぐさま購入した。
 たしかそのまえに同館の実験映画講座を受けていて、打ち上げの席で西嶋憲生講師がチェコのアニメ作家がどうとか喋っていて、氏は名前をド忘れしていたが、あとからおもうとシュワンクマイエルのことだったのだろう。社会主義体制が崩壊し、東欧のカルト映画がつぎつぎと紹介されはじめたころだった。
 とはいっても、シュワンクマイエルがまったく未紹介だったわけではないようで、佐藤忠男の古い本で「部屋」を外国かどこかの映画祭で観たと書いていたのをいつか読んだことがある。俺が不条理なドタバタとして楽しんだ「部屋」を、ソ連侵攻への抗議と読み解いていた。シュワ氏の作品が体制への諷刺だったことは、俺がはじめて観たころには気づかず、人形を使わない実写映画「庭園」に寓意性をかすかに感じた程度だった。そういえば佐藤重臣もヴェラヒティロバの「ひなぎく」を《現代の無為徒食を風刺した映画》と書いていて、やはりふたりの佐藤は侮れない。
 そのあと発表された作品では体制批判を強め、おもいっきりスターリンたちを取り上げたものなどすばらしかった。以後は長編を作りはじめたけれど、なんだったかを一本観ただけで、あまり感心せず、いつしかシュワ氏の映画は観なくなっていた。関連本や雑誌はいっぱい出たけども、やっぱ短編のほうが衝撃があったと思う。
 そんなわけでひさしぶりのシュワンクマイエル作品との出会い。今回は映画ではなく、美術作品の展示となる。二年前に亡くなった奥さんのエバシュワンクマイエロバアも著名な芸術家だという。やはり奇妙な造形物ばかり。動物の頭骨や、剥製や、貝殻や、流木を繋ぎあわせた新生物。博物図を張りあわせた珍獣たち。それは江戸時代につくられたという、河童や人魚の木乃伊みたいだ。美術展というより、見世物小屋のいかがわしい雰囲気。これらを動かし映画にすればよかったのに。粘土でなく関節人形を使えば、ハリーハウゼンに匹敵する怪獣映画ができたろう。手のかたちをした瑪瑙は天然品なのだろうか。レーニンの顔に甲虫標本をピン止めしたもの。アルチンボルドに捧げたような作品。マックスエルンストやルネマグリットやフリーダカーロ風の絵もある。コラージュも魅力的。撮影に使われた操り人形舞台も展示されていて、長編作品も観なきゃならんなと反省。乱歩の「人間椅子」から着想を得た最新の連作があり、むかし土曜ワイド劇場でレオナルド熊が人間椅子を演じていたのを思いだす。
 ひとつ気に食わない点をあげれば、この夫婦は自然を死物と見做しているのではないかということだ。東洋の人形戯が自然への畏敬から生み出されたとすれば、彼らは死んだ自然をいじくりまわしているだけではないかとの思いが湧きでてくる。
 会場ではチェコの人形アニメDVD販売も行なっていて、シュワンクマイエル以外にも観てみたい作品がいくつもある。藤城清治の影絵劇とケロヨン映画のDVDBOXも発売されてるらしい。観なければなるまい、正義のために!

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  • ヤン・シュヴァンクマイエル 2007年 夏!

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