長田鬼門『死刑のすすめ』

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双子のとうもろこし

 新聞広告でみた長田鬼門『死刑のすすめ 積極的死刑拡大論』(東洋出版)がおもしろそうだったので、都心の大型書店まで行って買い求める。近所の本屋になかったのだ。最新号の『群像』(読みましょう)にも一頁広告がでていますな。
 一般に反体制派(左翼というと語弊がある)は死刑反対、保守派のほうは死刑賛成の図式があるけれど、俺はこれはかならずしもあてはまらないのではないかと思ってる。大学時代の友人に、父親が自民党の地方議員で、いま産経新聞に勤めてるゴリゴリのタカ派がいて、つねづね「死刑は非人道的だから廃止すべきだ」と語っており、俺は自他共に認める反体制派なのだが、死刑は存置すべきと考えていて、よく議論になったものだ。池田清彦が「国家は死刑を廃止したがっている」との明察があり、これは正しいのではないかと思う。

 死刑に関する拙記事
http://oudon.at.webry.info/200505/article_15.html
http://oudon.at.webry.info/200511/article_8.html
http://oudon.at.webry.info/200604/article_4.html
http://oudon.at.webry.info/200604/article_5.html
http://oudon.at.webry.info/200707/article_2.html
http://oudon.at.webry.info/200803/article_4.html

 なので、本書の内容には概ね同意できるのだが、著者の文章には違和感もある。どっか軽くて、藤井誠二や日垣隆のように、犯罪の当事者や遺族と真摯に向きあったすえの結論とはだいぶ違うようにみえるのだ。あとがきの最後には《卑劣な犯罪者の標的にされ、殺された人々の無念さや苦しみは、真に想像を絶する。多くの人々の無念の思いがこの書を書かせた》(245頁)とありながら、最初のほうには《本書は、単におもしろい読み物として企画された》(241頁)とあるのはどうなのか。著者の経歴は不明なので、この人ひょっとして2ちゃんねらーかな、と思ってしまう。
 いくつか疑問点だけを記してみる。
 著者は死刑廃止論者を批判して《「社会悪をなくすべきである」とか、容易に達成できないことを、頻りに主張し、それの達成を前提とした楽観的社会運営を説くことから、彼らにおいて、この幻想の存在がはっきり読み取れる》(161頁)とのべ、社会をよくしようという思想を非難するのだが、すくなくとも俺は悪をなくしたい、社会をよくしたいと願うからこそ、死刑に賛成するのだ。とおもっていたら、著者自身が犯罪の比較研究が《我々の社会をよりよいものにするために不可欠の知識である》(235頁)と書いている。なんか釈然としない。
 また、もっとも正しい裁判のありかたは《被告被害者双方の情状を全く省みることなく、被告の刑は、犯罪の被害者の被ったダメージの大きさで機械的に決定されるそれである》(137頁)とのべていて、これはあるていど賛同できはするものの、別の箇所では、母親を虐待した義父を殺害した少年を、被害者にも咎が認められるとし、《少年の罪は、軽くてよい》(113頁)と書いている。俺はこれも賛成できるので、ならば被告被害者双方の情状も認められる場合があるとしなければなるまい。はたして著者はほんとうに《全体の整合性を大事にしたかった》(3頁)のだろうか。これではほとんど思いつきで書いてるととられても仕方がないのではないか。
 そうした欠陥がもっとも濃厚に現われると《冤罪者には、運が悪いと、諦めてもらう以外にない。冤罪事件は、発生してよいのであり、冤罪は発生して当然である》(98頁)という暴論になるのだ。
 こういうぐあいの思考のお遊びだから、賛成部分が多数を占めはするものの、読後感はあまりよくない。死刑拡大のためには、もうすこし論旨を緻密にする必要があるのではないか。

 かくして、今日も正義は、死刑によって守られた。

この記事へのコメント

Vermilion swan
2018年05月30日 00:38
まあ一部では「2ちゃんねるのようだ」とか言われるが、死刑大好き人間の僕はそれなりには共感できたかな?ちなみに僕は死刑の範囲をもっと拡大して医療ミス(患者たらい回し)に薬害エイズ、公文書改ざん、食品偽装や大量死亡事故を起こした鉄道会社などの幹部やキャリア官僚などにも適用したいと思っているからね?
ちなみに僕のブログ「意識低い系ですが、何か?」にも死刑について数記事書いておりますのでよろしくどうぞ!
http://vermilonswan1988.hatenablog.com/
2018年05月30日 08:43
私も政治家や企業の悪質な組織犯罪の責任者は死刑にすべきと思っておりますよ。そちらのブログは記事が多くて、まだ死刑のところにたどりつけてませんが、当ブログもよろしくお願いします。

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