インドネシアの大芸術アクション映画「ザ・レイド」

前記事にも書いたように、今月はアクション映画ばかり観ていたのだが、超A級の作品はない。DVDで「マッハ!ニュージェネレーション」を再見し、その素晴らしさに私は打ちのめされた。パンナーリットグライは現在最高のアクション監督で、「七人のマッハ!」「ニュージェネレーション」に匹敵する映画は、今後10年現れることはないと思っていたら、翌日もう現れようとは、思いもよりませなんだ!

 それが、インドネシアの超絶アクション映画「ザ・レイド」だ!

 まさかインドネシアでこんな凄い映画が作られていようとは思うまい。まあ監督は英国人らしいのだが、出演者は地元の格闘技の熟練者達のようで、とにかくすさまじい体技を連発し、観る者の視覚中枢を刺激し、生理的興奮を呼び覚ます。

 お話は単純。悪の巨大組織の拠点になる、廃墟のような高層マンションに、特殊部隊が潜入する。各部屋には極悪人が住んでいて(ごくわずかに一般人も生活している)、麻薬の精製工場もあるという。残忍な元締の麻薬王は二人の腹心とともに、十五階にいる。隊員たちは、各階にいる見張りを倒しつつ、目的地まで進んでゆくのだが、六階まできたとき、敵に気づかれてしまう。褒賞が約束され、ほとんど全住民が隊員たちに襲いかかるのだ。

 本作が「マッハ!ニュージェネレーション」を上回るのは、救いようのない残酷さ、逃げ場を失った空間で二十人の隊員たちが、つぎつぎと命を落としてゆく締めつけられるような緊張感だ。刀・短剣・拳銃・機関銃を手にした悪党どもがようしゃなく現れる。「ダイハード」と「ブラックホークダウン」をあわせたような展開。隊員たちはどうやってここから脱出するのか。一瞬たりとも観客が気を緩められる時間はない。

 本作で登場するのがインドネシア拳法シラットだ。肘と膝を駆使する闘い方は「マッハ!」のムエタイに近いようだし、警棒を使った場面をみるとフィリピンの格闘術カリにも似ている。おいらにとっては十数年前、石井達朗先生の著作(『アウラを放つ闇』)で記されていたのをみたの名前を知った最初だったと記憶する。そのあと某大学でシラット愛好会みたいな張り紙をみ、日本でも受容されてるのかと轟いた。十五年ぐらいまえ、後藤ひろひとと雑談したら彼もシラットを知っていた。その後THE BESTという大会だったかでシラットの選手とビルマ拳法ムエカッチュアの選手が対戦する試合があったはずだ。『喧嘩商売』という中絶してる漫画には、シラットの使い手の日本人が、素手でライオンを殺すほどの、最強レベルの格闘家として登場するのだが、作者がどれだけシラットの知識があるのかは疑問だ。岡田明憲先生『ユーラシアの神秘思想』にもシラット(「シラト」と表記)とイスラム神秘主義との関連が書かれている。

 最終場面、凶悪最強の敵にふたりがかりで対するところは、じつはむかしの香港カンフー映画によくあったパターンで、有名なところでは「プロジェクトA」で四人がかりで海賊の親玉を倒すとか、近年では「インビジブルターゲット」(この作品からかなり影響を受けているようにみえる)にもあったもので、こういう、強力な悪を倒すために善が汚い手を使うというのは、さかのぼればインドの叙事神話「マハーバーラタ」にもあるものなのだ。

 物語自体は単純ながら、細かいところに気が配られていて、脚本も練られている。これをみると、「エクスペンダブルズ2」なんかやっつけのC級映画に思えてしまう。インドネシア・タイ・香港・韓国のアクション俳優を集めて、欧米人を敵役にした映画を作ってほしいと切望する。

 かくして、今日も正義は、シラットによって守られた。



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