冬の美術館めぐり

バンクーバー五輪のころ、全国民が浅田真央を娘のように見守っている、とサルメの座長がブログに書いていて、なるほどと思った。「大事なところで転ぶ子は可愛い」ということか。浅田真央論とか新書出す社会学者があらわれそうだな。

今月は土日に雪で外出できないことが多く、そのため一日にいくつも美術展をハシゴしなければならなくなった。

まず日本橋三越の「ホキ美術館所蔵 森本草介展」。
写実絵画専門のホキ美術館は行ってみたいけど、どうやって行けばいいのかもわからない。しかし森本草介の絵はすばらしかった。
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女体のなめらかな肌にほのかに浮かぶ静脈。足の裏の皺。一本一本たんねんに描きこまれた髪の毛。ソフアの台木や、クッションや絹の質感もていねいに再現されている。静物画も素敵。ぶどうの実のあわく光る表面と、黒い斑点が視覚を刺激する。
しかし風景画はあまり魅力を感じない。ひとつの対象に向きあうのでなく、そこに息づくたくさんの生命をまとめて描かなくてはならないから、わりとふつうの表現にみえてしまうのかもしれない。

おつぎは東京国立近代美術館の「あなたの肖像―工藤哲巳回顧展」。50年代から活躍した、前衛美術家。昨年末には世田谷美術館で「実験工房展」に赴き、演奏会も聴き、戦後日本前衛芸術の先駆的存在の業績を知ったけれど、美術作品に親しむ悦びはさほど味わえなかった。けれど工藤哲巳作品は快楽をあたえてくれるもの。
内臓を想起させる、ぬめぬめとした造形物が皮膚感覚を刺激する。なによりすばらしかったのは、「あなたの偶像」と題された造形物。
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中央にあるポコチンをとりかこみ、ホルマリン漬けの胎児のような人形が精子みたいな先端を持つ紐でつながれている。すでに権威と化したイヨネスコの顔をつかった作品も不気味でよい。これらの作品はヤンシュワンクマイエルの美術や映像にかなり似ているのだが、シュワンクマイエルは工藤哲巳の影響を受けているのだろうか?

工藤哲巳の身体行為の映像などもみることができたが、これはそんなに心惹かれるものではない。反芸術を受け継ぎ、60年代、ハプニングやパフォーマンスといわれる行動を、日常をおびやかすものとして演じた記録が松涛美術館「ハイレッドセンター:直接行動の軌跡展」だ。寺山修司の市街劇も彼らから多大な影響を受けていることがわかる。松濤はひさしぶりだけど、改修工事してたらしい。

森アーツセンターギャラリーでは「ラファエル前派展」。じつはそんなに感心しなかった。私の趣味とはあわないようだ。ただこの氷河の絵はすばらしい。
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三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義」もみようと思っていたのだが、やめて東京都現代美術館でスペインと南米の現代美術展「驚くべきリアル」、東京ステーションギャラリーで英国現代美術展「プライベート・ユートピア ここだけの場所」をみる。スペインのエンリケマルティの不気味な肖像画群と、ウルグアイ出身マルチンサストレの映像三本が大芸術。このふたつを見られただけでも、足を運んだ甲斐があったというものだ。マルテイの絵はスペインの恐怖映画「REC」を思い起こさせる。サブカルおたく丸出しのナルシスト、サストレの映画は真の芸術。ウルグアイの芸術家として、ロートレアモンを超えたのではないか。

本日は最後までお読みくださり、ありがとうございます。
もしお読みいただいている貴方が、悪の側に位置する人間であるならば、
滅ぼす正義をお許し下さい。

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