世界文学大作戦:古代オリエント集の巻

DVD「DEEP THE BEST」三枚観る。PRIDE武士道にのみこまれるまえのDEEPにはロマンがあった。高阪剛×ホジェリオノゲイラ、上山龍紀×須田匡昇が見応えのある好試合。しかし初期DEEPを盛りあげた功労者のひとりランバーの試合がひとつも収録されていないのはどういった事情なのだろうか。

というわけで、最近は世界のさまざまな古典文学を読んでいる。今回とりあげるのは、筑摩世界文学大系1『古代オリエント集』。これには思い出がある。
現代日本の小説を中心に読んでいた十代の終わりごろ、そういった作品に飽きはじめ、あるとき図書館で矢島文夫訳『ギルガメシュ叙事詩』(山本書店版)をみつけた。解説を見ると、世界最古の文学作品だという。興味を持って、読んでみたが、なんだかよくわからなかった。
そのあと、やはり矢島文夫が訳したH・ガスター『世界最古の物語』を読んで、ようやく内容が頭に入った。これは比較神話や民族学を援用して独自の解釈をくわえ、古代バビロニア文学をわかりやすい読み物に仕立てた好著だった。
私もそこから、外なる自然としての森を伐採する人間、内なる自然としての死に抗う人間という主題を見出し、一篇の評論を書いた。梅原猛が同じ題材をもっと深く追求した戯曲『ギルガメシュ』をすでに発表していた。これは梅原の文業でも一番すぐれたものではないかと思っている。

で、『古代オリエント集』には矢島訳「ギルガメシュ叙事詩」をはじめ、メソポタミア・エジプト文明の文学遺産が数多く収録されているわけだ。文学作品というよりかは、考古資料というかんじで、文字の欠損もそのままに再現してある。
それでもこの本を二十五年以上にわたって何度も読み返してきたのは、原初の文学が持つ不思議な力に惹かれてきたからではないだろうか。
最初に読んだとき、自分の中で、文学という概念が一変したように感じた。アメリカ先住民の口承詩や、アイヌの神謡などをほぼ同時に読んだこともあって、近代文学への関心をすっかり失わせるほどの力があったのだ。

ここ二年ぐらい、やたらと思想文学全集のたぐいを買い集めてきたので、この本も手に入れたいと願ってきたのだが、古本屋でみかけたことないし、アマゾンで調べると15000円以上の値がついていて、とうてい手が出せない。
よくよく調べてみると、初版本は5000円ちょいで買えるとわかり、4200円ほどのものを購入できた。函は少少傷んでいるものの、中身はきれい。全集物はだいたい読まれないまま手放されることが多いので、保存状態がよいのだ。

ついでなので、理解を助けるために、ガスターの前記本をはじめ、岡田明子・小林登志子『シュメル神話の世界』、立石久雄『シュメールと古代エジプトの文学』などもあわせて読んでみた。

この本は収録作品が膨大なので、読むたび興味の対象が変わる。あるときは死んだ豊饒の神によびかける「ダム挽歌」、またあるときは神神が二手に分かれて相争い、滅ぼしてゆく「エヌマ・エリシュ」、またあるときは社会と人間の荒廃を嘆く「イプエルの訓戒」、等等。
今回面白かったのは、エジプトの物語と教訓文学。さまざまなパターンの作品があり、純文学と大衆文学の根っこさえ、この中に現われているように思える。ギリシャや北欧の神話、ゾロアスター教典、ヘブライ語聖典、千一夜物語など、あらゆる文学の萌芽が、ここに存在するのだ。

ギルガメシュ叙事詩の最後に蛇足のようにつけくわえられ、矢島訳では削除されている書板は、その他の異文とともに、岩波書店からでた月本昭男訳に載っている。矢島訳はちくま学芸文庫ででているから、岩波もぜひ月本訳を文庫化してほしい。またガスターには、古代中東の神話と儀礼と劇について考察した『テスピス』という書があるそうだが、これも邦訳してほしい。

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