芸術一直線

今年に入って忙しかったり寒かったり天気が悪かったりで、映画にも舞台にも美術展にもほとんど足を運べていなかった。ようやくヒマもできてので、横浜市民ギャラリーで「昭和後期の現代美術1964-1989」、そごう美術館「千住博展」、東京都美術館「奇想の系譜展」を鑑賞。

まず昭和後期の現代美術。神奈川県立図書館と横浜市立中央図書館にはよく行くのだが、その中間にある横浜市民ギャラリーは、道しるべがあるので存在は知っていたものの、訪れたことはなかった。場所の移転はあったけれど、もう五十五年の歴史を持つという。なかなか立派な施設だった。
足を運んだのは最終日だったが、入場無料のうえ、解説付きのきちんとした小冊子も配布され、うれしい。斎藤義重や吉仲太造の作品が印象に残る。

それから千住博展。これはすばらしかった。流れ落ちる滝を、じっさいに絵の具を画面に滴らせて制作する技法は、千住明が司会をしてた頃の日曜美術館でみたことあったけど、生でみるとほんとうに水の流れが巧みに表現されており、断崖絶壁は和紙を揉みくちゃにして貼り、岩肌の質感を再現する。天然岩絵の具は微かに煌めき、ある作品は照明を当てると妖しく光り、これらは写真では味わえない美しさ。加山又造亡きあとの日本の美は、千住博によって支えられているといっても過言ではない。

森アートギャラリーの新・北斎展にも行ってみたのだが、入場待ちの行列ができていたのであきらめる。
そして奇想の系譜展。辻惟雄の『奇想の系譜』はいまだに読んでいないが、若冲・蕭白・芦雪・其一・国芳などの画家にはながらく親しんできた。そうした人たちの極上の作品がまとめて鑑賞できるのはまさに至福のひと時。
衝撃だったのは岩佐又兵衛の山中常盤物語絵巻。盗賊に襲われ、重傷を負った常盤御前の死んでゆくさまが、時をこまかに刻んで克明に描写される。
岩佐又兵衛は、信長の家臣でのちに叛いた荒木村重の子なのだが、信長には、常盤を殺した賊の子孫といわれる体の不自由な物乞いをいたわり、施しを与えたとの逸話がある。又兵衛の浄瑠璃物語絵巻も展示されていたが、この浄瑠璃姫物語にも信長と関連づける伝説がある。又兵衛はこうした逸話は知っていたのか。はたして又兵衛は自分の一族を皆殺しにした信長をどう思っていたのだろうか?

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