詩と箴言:不断の進歩の物語を否定せよ

あなたの心が子供に縛られていれば、子供はあなたにとって愛すべき敵となってしまう。あなたがいかに教養と品格のある者でも、子供が誕生すれば、もはやかつてのあなたではいられない。たとえ立派な禁欲者であろうと、子供ができればあなたも堕落しきった者でしかありえない。

もし今日あなたが海と同じ色に染まれば、海の底を夜照らす真珠となるだろう。だが自己を求め続けるかぎり、魂も知性も手に入れることはできないだろう。
(アッタール『神の書』佐々木あや乃訳)

クリストファー・ライアン『文明が不幸をもたらす』(鍛原多恵子訳)で紹介されている、ボツワナのクンサン人の言葉。

「若いやつが大きな獲物を仕留めると、自分が族長や偉い人になったような気になって周りの人を使用人か目下の者と考えるようになる。それを許してはいけないんだ。俺たちは偉そうな口をきくやつは許さない。さもないと、いずれそいつのために人が死ぬことになる。だから、そいつの獲物は大したことがないと言ってやる。そうすることで若いやつを落ち着かせ、優しい気持ちにしてやるのだ」

同書は、人間の文明がつねに進歩し発展し、世界はよりよくなってゆくという楽観的な見方を「不断の進歩の物語」(NPP)とよんで批判する。そこで弾劾されるのはドーキンス・ピンカー・リドレーで、俺の考えと重なる。著者はピンカー『暴力の人類史』の出鱈目さを明快に暴きだす。リドレーへの舌鋒鋭い嫌味は痛快だ。
《自分を批判する者に、富が彼らの目を曇らせたと難癖をつけるリドレーのやり方は愉快でもある。何しろ彼は城で育てられ、貴族院の世襲議員の地位を約束され、イギリスの大手銀行のCEOだった(銀行は彼が采配を振っていたときに破綻した)。「富が彼の目を曇らせた」か?》
こいつ安倍晋三と変わんねーじゃん!

われわれも、不断の進歩の物語から脱却するために、先住民族の知恵から学ばなければならない。
というわけで、『生命の織物』という本から、夢絵手・ムルアカ・ジョン(鈴木宗男の秘書だった人)が記す、ザイールの言葉。

 自然の中で暮らしていると、鳥が起こしてくれる。
 雲よりも風のざわめきのほうが、より正確に雨を告げる。
 自然の声を聴くがよい。人間の作ったものは、あやまりだらけだ。

同書、三浦太郎が紹介する、フィリピンのタウスグ族の「母のための愛」という詩はこよなく美しい。

 「母は報われなければならない。
 なぜならば、母は長い困難を耐えてきたからだ。
 彼女の胎内に子どもが宿ったときから、
 ひとりの男あるいは女として成長するまで。

 母はつねに顧みられなければならない。
 彼女の愛情は年がたっても変わることがないからだ。

 (中略)

 われわれは、母の愛が量ることのできないほど大きいことを、
 心に深くとどめなければならない。
 しかも、月がたち、年がたつほどに、
 この愛は強くなる。

 若い者も年長の者も、
 われわれの母を敬え。
 彼女はわれわれのために、
 汗水を流してくれるのだ。

 もし、われわれの母が何かを求めたなら、
 それに従わなくてはならない。
 母のすることは、何もかも、
 われわれの幸福を願ってのことだからだ。」
 
 「もし、われわれの母が老いたならば、
 彼女を扶養し世話することに責任を持て。

 (中略)

 もし、われわれの母が弱ったならば、
 彼女を家で休ませよ。
 われわれは、彼女のために、日々の糧を確保しなくてばならない。
 それは、彼女がわれわれに示してくれた愛に対して、
 われわれがなしうるお返しである。

 もし、われわれの母が衰弱したならば、
 われわれは、われわれの手で、
 彼女にものを食べさせてやらねばならない。」

最後に映画「ダンガル」からNAINAという歌(稲田嵯裕里訳)

 この世界はウソで固められてる
 真実なのは胸の痛みだけ
 愛しい人よ 私たちの絆は
 まるで蜃気楼のよう
 そのひとみは
 すばらしい愛を共に追いかけてたのに
 今は涙を浮かべ別れようとしてる
 そのひとみは
 夜明けまで 共に起きてたのに
 今は朝が来ても目を開かない
 同じ道を共に歩こうと誓い合った2人なのに
 今は違う道を歩き 悲しみだけを分かち合う
 涙でうるむ そのひとみは
 希望に満ちて世界を眺めてたのに
 今は絶望の淵であえいでいる
 悩み苦しんで 息さえ乱れてる
 なぜこんなに心が沈むのだろう
 なぜ絶望して落ち込むのだろう
 何百万もの疑問が湧き上がってくる
 そのひとみは
 夜空の星のように輝いてたのに
 今は闇の中に消えてしまった
 そのひとみは
 太陽の温もりを楽しんでいたのに
 今は疲れ果て日陰を探してる
 同じ道を共に歩こうと誓い合った2人なのに
 今は違う道を歩き 悲しみだけを分かち合う
 涙でうるむ そのひとみは
 希望に満ちて世界を眺めてたのに
 今は絶望の淵であえいでいる

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