イングロリアスバスターズ

 タランティーノって温水洋一に似てるな。
 さて、「イングロリアスバスターズ」観てきました。ネタバレありで語ります。観てない人は読まないで。

 率直に、かなり面白かったです。

 冒頭、「ユダヤハンター」の異名をとる、ナチスのランダ大佐が、辺鄙な農家へやってくる。かつてここに住んでいたユダヤ人一家を捜しにきたのです。大佐は主と密談をはじめます。はじめはフランス語で、やがて会話は英語になります。アメリカ映画で、非アメリカ人がみんな英語で会話してるのを見ると、なんか違和感があったりしますが、そういうかんじでムリヤリ途中から英語にしたのかと思ったのですが、じつはそれが伏線になっている。床下には主人が匿っているユダヤ人家族が潜んでいて、切れ者の大佐はそれを見抜いている。この場面、対話だけでなりたっているのですが、かなり緊迫感に満ちています。
 大佐は主人をたくみに誘導し、取引をし、隠れていたユダヤ人を射殺してしまいます。しかし娘のショシャナだけはなんとか脱出し、生きながらえます。

 しばらくたって、少女はパリの映画館の小屋主になっています。なぜそうなれたのかという疑問は残りますが、まあよしとしましょう。そこへ若いドイツ兵がやってくる。映画好きらしい兵隊は、ショシャナとしばし映画談義を楽しみ、喜んで帰ってゆく。
 じつはその兵卒は、戦場で三百人もの敵兵をたったひとりで打ち負かしたドイツの英雄で、彼の活躍を描いた映画が製作され、自身が主役を演じたその作品の試写が、まもなく大大的に行なわれるということなのでした。宣伝相ゲッペルスはこの映画でハリウッドを乗り越えようと意欲満満です。

 いっぽう、アメリカ人レイン中尉に率いられた「バスターズ」とよばれるナチス狩りの一団が、活動を開始しています。ナチスに憎しみを抱く彼らはドイツ兵を虐殺し、死体の頭の皮を剥ぎ、「アパッチ」と怖れられている。

 またさらに、英国では、ドイツ映画の研究家だったヒコックス中尉が呼ばれ、「プレミア大作戦」の実行が言い渡されます。ドイツの若き英雄フレデリックツォラーを描いた映画の特別試写には、ゲッペルス以下ナチの要人が集められる。そこを狙って映画館を爆破し、いっきに壊滅させようという作戦です。中尉はフランスへ飛び、バスターズと合流し、スパイとなっているドイツ人有名女優の手引きでパリの試写会に参加しようというわけです。

 ショシャナは、自分に想いをよせる若き英雄から呼びだされ、ゲッペルスやランダ大佐もいる席で、特別試写会の劇場を彼女の映画館で行ないたいと伝えられます。映画館の変更の蔭には、ヒトラーのとびいり参加がありました。彼女はこれを機に復讐をはたそうと、やはりナチを焼き殺したいと願っている恋人の映写技師マルセルと共謀し、試写会で映画館を炎上させてしまおうと計画する。

 フランスに潜入したヒコックス中尉は、抵抗活動家の経営する酒場でちょっとリリーマルレーンてかんじな女優ハマーシュマルクと密会しますが、おりわるく、そこには子供が生まれたばかりのドイツ兵の祝宴がひらかれ、数名の兵士が集っていたのでした。

 というぐあいで、ふたつの計画がかちあい、「現金に体を張れ」や「ジャッカルの日」のように、ちょっとしたきっかけで頓挫してしまう物語だと予測していると、あにはからんや、映画館は紅蓮の炎につつまれ、ヒトラーもゲッペルスも(おそらく「最後の人」「嘆きの天使」の名優エミールヤニングスも)殺され、戦争は終結してしまうという終わり方。
 もしかしたら、トムクルーズの「ワルキューレ」があったために、急遽台本の変更を余儀なくされたのでしょうか。本作はイタリア映画の焼き直しだそうですが、元ネタはどうなっているのか知らないのでなんともいえません。最後の最後で夢物語みたいになり、観客の裏をかいたつもりが凡庸な結末になっているというかんじで、感動は半減しちゃいました。終わり悪けりゃすべて台無し。とはいえ、結末以外はかなりの見応えなので、金返せとはいえません(もっともその期間はすぎておりました)。これで見事な幕切れが用意されていたら、「死刑執行人もまた死す」「大脱走」に匹敵する大傑作だったのに、という失望は隠せません。またあるいは、タランティーノはこの結末で傑作扱いを拒否し、俺はあくまでC級作家だと、ひらきなおっているのでしょうか。

 物足りなさをあげると、まずなにより体を使ったアクションが欲しかった。映画の大半が会話の中の駆け引きで占められていて、それはそれで緊張感はあるのですが、こういった場面ばかりつづくとさすがに飽きがくる。あとバスターズの面面の個性をもうすこし引き立たせて欲しかったですね。ドイツ人でありながらナチの将校を惨殺したヒューゴだけ、とつぜん紹介映像が挿入されるのですが、こういう全員の過去を細部までみせてほしかった。とつぜんフイルムの可燃性についての薀蓄がでてきたり(むかしの『魁!! 男塾』みたい。そういえば額に印をつけるとこは『男組』だったりして)、こういった方法ももっとふんだんに使うべきです。そうすれば実験的メタ映画として、もっと上映時間が長くなって、前後編二本にわけられててもよかったぐらいです。まあ「キルビル」は一作目そうとう面白かったのに、息切れしたのか二作目は観るに耐えない大駄作だったので、これが限度なのかもしれませんが。

 「キルビル」につづいて、ジュリードレフュスでてました。ファックシーンも一瞬だけあり。彼女かつて大島渚を尊敬してるとかいってた記憶あるけど、こんな映画に出てていいのか?

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