崇高筋肉仮面 三島由紀夫

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本当に背の低い人でしたよ、これくらいの人間でした!
(大江健三郎『新しい人よ眼ざめよ』)

おくればせながら、あけましておめでとうございます
私は今年も、この世に巣食う悪と闘いつづける所存であります

 というわけで、最近はちょっと三島由紀夫に凝っている。
 とはいっても、三島の小説は「金閣寺」しか読んでない。三島の文学や思想でなく、その人間と壮絶なまでの自己劇化に興味があるのだ。

なんで俺が三島の小説をほとんど読んだことないかというと、自分がいちばん文学に親しんでいたころ、自分はもっとも左翼的な時期で、三島は右翼作家と思って敬遠していたのだ。とうじ恋心を抱いていた女性が「三島由紀夫嫌い」とつぶやいていたのにも影響されたかもしれない。

人間三島に関心を持ったのは、十数年前、板坂剛が『噂の真相』に記事を書いていたからで、惹かれて板坂の『極説三島由紀夫 切腹とフラメンコ』を読んだらこれがめっぽう面白く、のちいろんなところから三島の逸話が断片的に入ってくるにつれ、三島とはこんな魅力的な人物だったのかと見直さずにはいられなかった。で、板坂と鈴木邦男の対談など収録された『三島由紀夫と一九七〇年』という本があって、『極説三島由紀夫』の増補版として企画されたものと知り、そのうえ日本未公開の映画「MISHIMA」DVDも付録されているので、迷わず購入した。そういえば三島が主演した映画「からっ風野郎」は学生時代に観ている。

その後、武智鉄二のことを調べたとき、三島との交友を知ってまた興味を惹かれた。両者とも「攘夷」で見解は一致していたという。ついでに「文化防衛論」も読んだが、これは感心しなかった。

去年、美輪明宏の記録映画を観て、また三島に興味を持った。耽美派の作家だからではなく、きわめて俗っぽい部分がなによりいいのだ。

美輪明宏ドキュメンタリー~黒蜥蜴を探して~
http://oudon.at.webry.info/201309/article_3.html

そんな人物がなぜ奇怪な死に方をしたのか、といろいろ資料を漁っていると、やっぱりその中核には死を憧憬する自己陶酔があるように思える。武智鉄二は、三島が森田必勝にひきずられて仕方なく死を選んだように書いているけど、違うのではないか。いつからかまではしらないが、切腹という形で生を完結することを望んでいたのだろう。みずから製作・監督・脚本・主演をつとめた映画「憂国」はそのための予行演習と思われる。

三島のほんとうの姿は脆弱な知識人なのだろう。それをつつみかくすため、肉体改造を施し、俗悪を好む豪放磊落な人間を演じつづけた。そこにある落差が面白い。芥川や太宰のように痩せぎすのまま死ぬことを潔しとせず、筋肉の仮面をかぶって、自己を見世物化してから死ぬ。その壮絶なまでの陶酔的演劇性。三島の思想は、自死を正当化するためのあとづけの理由のようなものではなかったか。

しかし、その死体まで世に晒されるとは思わなかったろう。《あなたはまさか、切り裂いた自分の腹からハラワタがはみ出し、自分の首が斬りおとされてころがっている現場写真を見せられ、多くの人々が「気持がわるいなあ」と騒ぎ立てるようになることまで、見ぬいてはいなかったでしょう。》と武田泰淳も指摘している。だがそれもまた一興。それにしてもこんな不思議な人物はそうそういないだろう。知れば知るほど興味が湧くのだ。

三島の死について、大藪春彦が、どうせ死ぬなら首相官邸に討ち入り総理大臣の首をはねればよかった、と発言しているのを大昔どこかで読んだ記憶があるけど、出典を憶えていない。

かくして、今日も正義は、三島の霊によって、守られた。




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この記事へのコメント

2014年01月12日 22:13
ありがとうございます。興味深いですね。ゆっくり読んでいきたいと思います。
2014年01月14日 09:58
ご紹介いただいた「小説家Mの話」を読んでみたら、逸話の宝庫で、物凄く面白い。立派な三島の評伝になっている。

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