世界の終末思想

M・ヒンメルファーブ『黙示文学の世界』はなかなかの好著。黙示文学というと通常は聖書の外典偽典のように、ユダヤ教からは排除された、キリスト教資料として扱われる。けれどもユダヤ人の著者は、ビンサンチン時代の「セフェル・ゼルバベル」「セフェル・エリヤフー」といったユダヤ文学を取り上げていて、こうした文献はほかに資料がなく、邦訳もない。岡田明憲『ユーラシアの神秘思想』によると、チベットの経典「カーラチャクラ」には、仏教とヒンズー教の連合軍がイスラム教と最終戦争を行うとの思想が表されているというが、これも日本ではまったく知られていない。けっきょく日本での終末論研究はキリスト教に限られてしまっているのだ。

草野巧『世紀末 神々の終末文書』には、キリスト教以外の世界のさまざまな終末思想が網羅されており、きわめて興味深い。

マヤ神話チラム・バラムの予言も再読。こちらはキリスト教の影響を受けていることもあり、週末の描写はもろに黙示録だ。それにしてもマヤ神話は理解しがたく、それというのも暦法が難解だからで、前記『世紀末』にはそうしたマヤの暦が解説されている。宮西照夫『マヤ人の精神世界への旅』では、古典期マヤ文明衰亡の理由を予言に求めており、これもまた一考に値する仮説ではないか。

フランク・ウォーターズ『ホピ 宇宙からの聖書』もまた良書。メキシコ近くに住むホピ族の神話伝説・儀礼・歴史が詳述されている。マヤ神話ポポルブフのように、ホピもまた、人間が誕生する以前の世界の終末が語られ、四番目の世界として創生された人類もやがて滅亡すると予言される。訳者あとがきでは第四の世界の終焉(人類滅亡)について、列車や飛行機や核兵器などが具体的に予見されたと記されている。

インドのマヌ法典にも独自の暦法が語られる。世界は薄命と薄暮をくりかえすという。はじめは正義と真実が完璧な時代から、しだいに摩耗し堕落し、滅んでゆく。そしてふたたび新しい世界が創りだされるのだ。
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マヌ法典では語られないが、一部のヒンズー宗派ではシバ神が世界の破壊をつかさどるといわれる。

終末思想を極めたら、つぎは近代の人類滅亡思想の勉強にとりかからねばならない。
かくして、今日も正義は、私によって守られた。

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