「ダイハード4.0」「イラク 狼の谷」

 去年の上半期はアクション映画の目白押しで私もずいぶん幸せな気分だったけれど、今年はここにきてやっと上映されはじめ、嬉しいかぎり。

 さてダイハードシリーズ最新作がとうとう完成されたわけだが、一作目が封切られたとき、ちょうど俺は受験生で、まったく情報がなく、大学の合格発表を見た帰り、なんとなく立ち寄って、あまりの面白さに度肝を抜かれ、つづけて二回見、さらに映画館で数回、ビデオでも数回見返したものだ。閉鎖された空間の中に侵入したウイルスのように立ちまわり、主人公のジョンマクレーンが綿密に計画された敵の犯罪を瓦解させてしまう物語は斬新で、シチエイションアクションという新たな分野の幕開けを告げたといっていい。
 二作目は管制機能を乗っ取られた空港との設定で、より開かれた密室というべきものだったが、空間が押し広げられたぶん比重がかかるはずだったアクションは雪上車や飛行機を使ってはいるものの生理的興奮には至らず、タカ派の軍人と中米あたりの独裁者が結託する発想は面白かったけど、多数の敵をまとめて始末してしまう結末もつまらなかった。
 三作目となると、もう主人公が死なないということがギャグになってしまい、悪のインフレもおさえきれず、増殖しすぎた敵がおきざりにされたまま終わりという、中途半端なものであり、しかも、画面に表れるがぎり敵方は警官や警備員を三人ぐらい殺しただけなのにたいし、マクレーン刑事はひとりで百人ぐらい殺していて、なかでも銃をかまえてもいない敵を問答無用で射殺する場面に至っては、勧善懲悪を妨げる反則といってもよく、この映画もここで打ち止めだろうとの気分を強くさせる愚作だった。
 それからはや十二年。俺ももうすっかりこの映画を忘れていたけれど、やはりいてもたってもいられず、映画館に駆けつけたのだった。今回の敵は、全米の都市の機能を麻痺させ、自在に操作し、支配してしまうのだ。
 こんな犯罪が現実に可能なのかはわからないけれど、交通機関から通信装置、燃料配給まで意のままに操ってしまう謎の主犯者と、事件にまきこまれたマクレーンを重武装で執拗に襲ってくる手下たちには、これから何が起こしてくれるのかと期待せずにはいられない。天然ガス攻撃とか、この時期やばいような気もするが。
 問題なのは、まんなかすぎると進展が止まってしまうことだ。破壊活動自体は大規模だが、その目的と動機がきわめてしょぼくて(というかありきたりで)がっかりする。一作目のときみたいに、最後までハラハラドキドキできないのだ。まあトムクランシー物みたいな政治的含みは持たせないよう脚本もかなり苦労したようで、帝国主義丸出し007やチャックノリス(スタローンやシュワルツェネッガーは微妙)にくらべれば、一貫して内部の敵と闘うスパイ大作戦のトムクルーズはリベラルだなと思う。
 あと最大の見せ場、大型貨物車と戦闘機の攻防は大迫力だが、スピードと高さを体感させる映像にはなりえていなかったと思う。シュワルツェネッガー主演「トゥルーライズ」には勝るが、「MiⅢ」には劣る。マギーQは素敵だったが、悪役は勿体なさすぎる(Qって、阿Qみたく名字を漢字でどう書くかわからなかったのかしら)。最初と最後に出てくる身軽なフランス人はヤマカシ関係だとおもうが、やっぱり善玉として見たかった(フランスアクション映画はもっと頑張ってほしいけど、「マックス 鳥人なんちゃら」とか見ると絶望的だ)。
 けっきょく、大満足には至らなくても、まま満足はいく映画だったとはいえるが、もうすこし脚本を練ってほしかった。物語的にはセガール主演「暴走特急」のほうがよくできてた。アクション飢餓はいちおう満たされた。

 それから、去年記事でふれたトルコの反米活劇映画「イラク 狼の谷」も見る。さすがに聖林映画にはおよびもつかぬが、それなりに面白かった。邪悪な米人が殺されるさまを見るのは気持がいいものだ。もともと同じ主人公がマフィアと闘うテレビの人気ドラマを映画化したものだそうで、演じる俳優はまるっきり演技経験がなかったとのこと。各民族を超えて尊敬を受ける導師が自爆攻撃や人質殺害を戒める言葉は深く、また導師を囲み円陣を組んでの舞踊は美しく、中央の導師をカメラがまわる映像はまるで松本俊夫の実験映画のよう。女優さんもきれいだった。アジア各国が力を合わせて、反米・反西洋娯楽映画を作るべきだろう。

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